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女とは思えなかった。
ただのガキとしか思えなかった。
今でも、そうだ。





悪いな、ガキには興味ねえ















「プロシュート。
 へまをやったな」
「何?」
オレはリゾットの声を疑った。
ここ最近の仕事を思い出す。
何一つへまなど思い出せない。
「お前を嗅ぎまわっているやつがいる」
「相手は?」
「一人。
 カタギの娘だ」
「はぁ?」
何だそれは。
「相変わらずモテるね、プロシュート」
後ろでメローネが声を上げた。
「カタギだろうが娘だろうが、放っておけねぇだろうが!
 殺っちまえよ」
横でギアッチョも騒ぎ出す。
「警察の動きは特にないが、妙なところから足がつく恐れもある。
 きっちり片をつけてこい」
「言われなくてもわかってる。
 で、その娘の居場所は?」
リゾットから地図と娘の詳細が書かれた紙を受け取った。
「カタギの娘とはいえ、万が一がある。
 ホルマジオついていけ。
 気をつけろよ」
「誰に向かっていってんだ」
オレは上着を手に立ち上がった。
面倒なことになりやがった。

名前は
年齢は18。
確かにまだ娘だな。
オレは溜息を付きながら、地図を見る。
「どこかで見た住所だな」
確かに最近。
「前のターゲットの近くなんじゃあないか?
 そいつに殺しでも見られたとか」
それで思い出した。
先日男を殺った時にそこにいた女の事を。
こんなことなら本当に始末しておけばよかった。
「思い出したか?」
「まぁな」
「しかし警察に垂れ込むわけでもねぇ、何だってお前に用があるんだ?」
「さぁてね」
オレのこの応えにホルマジオがからかう様な口調で言う。
「本当に惚れられたんじゃねぇのか」
「ふん、行けばわかるだろうが」
「否定しないとこがお前らしいな」
今回は容赦しねぇ。
まだガキだがおかげで余計な仕事が増えた。

ホルマジオの能力で娘の部屋へと潜り込んだ。
「特に怪しいところはねぇな。
 マジでただの一般人らしい」
部屋の中を見回してたホルマジオが言う。
ヤツの言うように、怪しいところも気になるところも何一つない。
「オレ一人で十分だ。
 もう帰っていい」
「確かにな、だが万が一ってのがある」
「ねぇよ」
相手はまだガキだ。
あんな風に人を殺したオレが、どんなに危険か考えずに探している。
そんな間抜けなお嬢さんだ。
「わぁったよ。
 終わったら連絡入れろ」
「ああ」
ホルマジオが帰った後、オレは近くにあった椅子に座る。
机の上にはピンナップ。
その中にこの部屋の持ち主も写っている。
「まだ18なのに、可哀想にな」
何もせず、殺人のことなど忘れていれば殺されずに済んだのに。
馬鹿な娘だ。
その時、部屋に近づく足音が聞こえてきた。
がちゃがちゃと鍵を開ける音が聞こえた。
ドアを開け、その人物は一歩二歩と部屋へと入ってくる。
そして。
オレと目が合った。
「オレを探してるらしいな」
「あ・・・」
一気に片をつけてもよかったが、多少興味もあった。
オレを探してどうするつもりだったのか。
脅すつもりだったのか。
それとも誰か殺してほしいとでもいうのか。
「で、用件は?」
オレは立ち上がる。
だが娘は後ろに下がった。
まあ、普通に考えて警戒するところだろう。
それがわかっていてオレはさらに近づいた。
「オレに会いたかったんじゃあないのか?」
娘の背が壁についたところで一気に間合いを詰める。
右手で顎を上に向かせた。
「なんとか言え」
恐怖からか娘の目に涙が浮かんでいる。
「・・・あなたに」
小さな声だ。
「オレに?」
「・・・会いたくて」
涙が落ちる。
「もう一度会いたくて、探したんです・・・」
そっちかよ。
全く迷惑な話だ。
おかげで余計な時間をくった。
「オレを怖いと思わなかったのか?」
娘は首を振る。
どうしたもんか。
殺す必要があるのか、ないのか。
言いくるめて放っておくのがいいか。
「悪いな、ガキには興味ねえ」
と言いつつも、顔を眺める。
嫌いな顔じゃあねぇな。
そんなことを思った。
涙の痕にキスをしてやる。
「オレのことは忘れろ。
 お前の為だ」
そして今度は唇にキスをする。
やはり悪くない。
その感触を優しく味わう。
すると力が抜けてきたのか、足から崩れ落ちそうになっている。
左手で腰をしっかりと支え、さらに続ける。

すっかり腰が砕けた娘を置いてオレは部屋から出ようとする。
「ま、待って」
「オレのことは探すなよ」
「また探したら・・・」
「殺す」
嘘は言っていない。
このことが原因で足がつくとは思わなねえが、どこでどんな話が広がるかわからねえからな。
芽は小さいうちに摘み取る。
「・・・せめて名前だけでも・・・」
「ダメだ」
諦めの悪い娘だ。
「じゃあな」
オレは部屋を出た。

まだ小娘だがキスの相手としては悪くはなかったな。
そんなことを考えながら、リーダーにどう報告したもんかと考えながら歩いていた。



2.悪いな、ガキには興味ねえ(年上の彼のセリフ(2):1)
完了:2014/7/10