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意外といいもんだ。
オレはアジトに向かいながら昨日の夜を思い出していた。
いつもなら、そんなこともないのだが。





オレを惚れさせてみな














「あの件はどうなった?」
リゾットから娘の始末をつけるように言われ、早数日。
特に報告はしていなかったが、逆に聞かれた。
「片はつけたぞ」
間違ってはいない。
はあれ以来オレを探そうとはしなかったし、これからもしないだろう。
別に殺す必要もない。
「昨日の夜はどこにいた」
「女のところだ」
「まだ小娘だろう」
うちのリーダーは勘がよくていけねぇな。
「別に構わねぇだろ」
「ターゲットに必要以上に近づくなんてお前らしくない」
「ターゲットじゃあねぇだろ」
そう言ってやると、リゾットは一つ息を吐いた。
「まぁ、この件はお前に任せたんだからいいと言うならいいだろう。
 また仕事だ」

昨日の夜。
本当はのところにいく予定ではなかった。
別な女のところに向かったのだが、先客があった。
運悪くその男に見つかり、面倒なことになりそうだったのですぐにそこを後にした。
あの女のところにはもう行けねぇな。
そんなことを考えながら歩いていると、運の悪いことに雨が降ってきた。
アジトまで距離がある。
そこで近くにいる女を思い返したところで出てきたのがだった。
特に迷いはなかった。
もう会うつもりはなかったが、構わないだろうとも思った。
時計は21時を過ぎていた。
しかし、はいないのかドアを叩いても反応がない。
男とデートでもしてるんじゃあないかと思い、諦めかけた時が帰ってきた。
生活費を稼ぐ為バイトをしていたと言うんだから感心なものだ。
まぁ、まだ学生だからそんなものかもしれないが。
オレの今までの女を思い返した。
金と時間に不自由しない女ばっかりだったな。
そしてケツの軽い女はっかりだった。
それが楽で付き合っていた。
面倒な女には手を出さない。
そう考えたところであの娘はどうなんだろうと思った。
男慣れしてるとは思えない。
どちらかと言えば普通の平凡な娘だ。
もし、面倒な女だったらそれまでだな。



今日のターゲットを無事始末し、オレはアジトへと向かう。
が、気が変わった。
「ペッシか?オレだ。
 ああ、任務は完了した。
 今日は戻らねぇとリーダーに伝えとけ」
オレは足を別なところへと向けた。
昨日の今日だがいいだろう。
「プロシュート」
ドアを開けるなりが嬉しそうな顔をした。
「体は辛くないか?」
「え?」
「大分無理させたからな」
言われた意味がわかったのか、顔を真っ赤にしている。
「だ、大丈夫」
こんな反応が新鮮で、ついからかいたくなる。
「のども大丈夫そうだな。
 あれだけ声をあげてたから、潰れてるんじゃあないかと思ったぜ」
さらに赤くなる。
オレはソファに腰を下ろした。
はコーヒーを持ってきて別な椅子へと座る。
「今日はお仕事はいいの?」
「もう終わった。
 お前は?」
「今日は休みだから」
ふと何かが違うことに気づいた。
昨日あれだけオレの顔を見てやがったのに、今日は目も合わせやしねぇ。
それが面白くない。
「何でそっちに座ってんだ」
「狭いかなと思って」
「2人用だろ。
 狭かねぇよ」
オレは無理やりの手を取り、自分の横に座らせた。
それでもまだオレの顔を見ようとしない。
「おい」
「な、何?」
「何でこっちを見ねぇんだ」
「そ、それは」
口ごもるの腰に手をやり、体ごとこちらに向けさせた。
すると俯いて下を向く。
「おい」
「は、恥しくて・・・」
「何が」
一体何が恥しいんだ。
「だって顔を見ると思い出しちゃうから」
・・・そういうことかよ。
「じゃ、もっと思い出せるようにしてやるか?」
「え?」
オレはのシャツを脱がせにかかる。
「ま、待って」
「そりゃあ、無理ってもんだ」
首筋に一つキスしてやると大人しくなった。
「んっ」
そのままソファに押し倒す。
「ご、強引っ」
「そんな男に惚れた方が負けだ」
「ううっ」
「いいじゃねぇか。
 気持ちよかったろ?
 悔しかったらオレを惚れさせてみな」
ぐうの音も出ないらしい。
「おしゃべりは終わりだな」
の下唇を舌でなぞる。
そしてそのままキスをした。


午前5時。
オレは静かにベッドから降り、投げ出していた服を着る。
はよく眠っている。
一つ伸びをして、オレはドアへと向かった。
別に情がうつった訳でもましてや惚れた訳でもない。
ただ不思議と居心地がいい。
また来てやってもいい。
それくらいは思った。


4.俺を惚れさせてみな(自信家な彼のセリフ;2)
完了:2014/7/10