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「いいな、にこれ以上手ぇ出すんじゃあねぇぞ」
オレは男を見下ろしながら言った。
男はの義父だ。



いい暇潰しにはなったがな















の義父だというのに娘に手を出そうっつうクソ野郎だ。
大分痛めつけてやったからもう手出しはしねぇだろう。
オレの手を煩わせやがって。
ま、これで は大丈夫だろう。
するとそこで携帯がなった。
リゾットからだ。
「アジトに戻って来い」
「オレは今日は」
「探し物が見つかったようだ」
ヤツの声で何かがあったことを察する。
「すぐ戻る」
オレはアジトへと向かった。


「ペッシ、準備は出来たか?」
「も、もうちょっとだけ待ってくだせぇ、兄貴」
2年前、ソルベとジェラートが殺された。
ボスからのメッセージは明確だ。
裏切り者には死を。
しかも普通の殺り方じゃあなかった。
アジトに倒れて死んでいたジェラートと、後に変わり果てた<物>として届いたソルベ。
それからオレたちは表向きはボスに従順な振りをして機会を伺っていた。
殺らなきゃ、いつか必ず殺られる。
そこに重要な情報がもたらされた。
ボスに【娘】がいるという情報が入った。
オレたちが探していたボスへの手がかり。
これをチャンスと捉え、ボスの娘を探す事になった。
だがその娘を護衛しているヤツラがいるようだ。
最近幹部になったブチャラティのチームらしい。
オレはブチャラティには実際会った事はないが、優秀な男だという。
既にホルマジオとイルーゾォが向かっている。
オレとペッシもその後を追う。
オレたちのチームは組織の裏切り者となった。
失敗は許されない。
オレは携帯を取り出した。
これはチーム用ではない、オレの個人携帯だ。
今までは持っていなかったが、最近ふと購入した。
だからと言ってそうそう使うわけではないが。
登録されているその番号にいつものように電話をかけた。
「プロシュート?」
の嬉しそうな声が聞こえてきた。
「飯は食ったのか?」
「うん、もう食べたよ」
「遅くまで寝てたんじゃあねぇのか」
「そんなことないよ、ちゃんといつもの時間に起きました」
とりとめのない話をした。
先ほどまでの血なまぐさい話が嘘にも思えてくる。
どちらが夢で現実か。
このままずっと話していたいと思うなんて、オレもヤキが回ったもんだ。
「でも電話くれるなんて珍しいね。
 何かあった?」
「・・・いや」
「そう?
 プロシュート、様子がいつもと違うよ」
のこの言葉に俺はどきりとした。
悟られてはいけない。
これから何が起こるかわからねぇ。
死ぬつもりはないが、万が一にも巻き込むわけにはいかない。
「ただ、もう飽きただけだ」
「え?」
「飽きたんだよ。
 お前にな」
「・・・何を言ってるの?」
「わかんねぇのか?
 お前にはもう飽きたって言ってんだよ。
 ま、いい暇潰しにはなったがな」
「・・・もう会えないってこと?」
「かもな」
「私、悪いところがあった?」
「ねぇよ。
 言ったろ?ただ飽きたんだって」
「・・・・・・」
「オレのことは忘れろ」
「そんなの無理だよ」
の涙声に心が揺れる。
「相手が悪かったな。
 もうかけてくるなよ」
「あ、」
オレは電話を切った。
そして携帯を地面に叩きつけた。
何も形跡が残らないよう、何度も踏みつける。
の痕跡を残すわけにはいかない。
「兄貴、用意が出来ましたぜ」
「おう、行くぜ。ペッシ!」
もう思い残すことは何もねぇ。
いや、今すぐにに会いたいと思った。
一目でいい。
だがそうもいかない。この状況では。
思い残すことばかりだ。
今度会いに行くまで元気にしてろよ。
会ったら思い切り抱きしめてやろう。


6.いい暇潰しにはなったかな(上から目線な彼のセリフ:4)
あとがき。
完了:2014/8/8